| 研究概要 |
我々は種々のモデルに対して非磁性状態や磁場誘起スピンギャップの機構を探り,それが現れる条件や磁化曲線の振る舞いを明らかにした.
1.ボンド交代と次近接相互作用を併せ持つS=1スピン鎖の磁場中の性質について詳細に調べ,格子に整合的は秩序と非整合的な秩序の出現について論じた.また,この問題が磁化プラトーの存在と密接に結びついていることも明確にした.F_5PNNと略称される有機合成物質はこのモデルでよく記述されると考えられていて,実験グループとも共同研究をおこなった.
2.三角柱型スピンナノチューブについて解析的,数値的に研究をおこなった.三角形が正三角形か二等辺三角形(正三角形を含まない)かで低エネルギーの性質が非常に敏感に異なることが示された.ちょうど正三角形の時のみ状況が特別であるのか,それとも近似的に正三角形であるときも同様の状況なのか,と言う問題については研究が進行中である.
3.三量体性,フラストレーション,異方性,を併せ持つS=1/2スピン鎖について基底状態を調べ,適当な三量体性とフラストレーションの領域では異方性を動かしたときにリエントラントを含む複雑な基底状態相転移が起こることを明らかにした.例えば,フェリ,ネール,スピン液体,ネール,という相が順次現れる.
4.歪んだダイヤモンド型格子をもつ物質であるアズライト(藍銅鉱)について,実験グループと密接な連携の下にその性質を解明した.基本的には我々の理論的予言通りであったが,物質特有の相互作用などもあり,それらの効果を取り入れたより精密な理論構築が進行中である.
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