研究概要 |
金属間化合物RNi_2B_2C(Rは希土類元素)は、超伝導と希土類元素のスピン秩序が共存・競合し、超伝導、スピン秩序、フォノンのソフト化(格子異常)が密接に関係する。本研究ではスピン秩序温度(Tx〜5K)と超伝導転移温度(Tc〜7K)がほぼ等しく、またリエントラント超伝導を示すR=Hoに焦点を絞り、希土類元素のスピン秩序と格子異常(この系では希土類元素の軌道秩序とも密接に関係する)の観測から超伝導と希土類元素のスピン秩序の共存・競合のメカニズムを明らかにすることを目的として、電子物性測定、超音波測定、放射光によるX線磁気散乱の実験を行った。 赤外線集中加熱炉により作製した単結晶の超伝導特性のアニール条件依存性を交流帯磁率と電気抵抗測定により詳細に調べた。その結果、アニール条件により超伝導転移温度と超伝導の体積分率が顕著に変化すること、以前に可能性が指摘された超伝導転移の電流方向に対する異方性は存在しないこと、が明らかになった。 超音波実験では、C面のせん断歪みに対応する弾性定数C_<66>が80K以上の高温から大きくソフト化し、およそ5Kで最小となることを見出した。さらに磁場中の実験によりC_<66>のソフト化の振る舞いは加える磁場とその方向に大きく依存し、C軸方向の磁場では影響を受けないのに対し、C面内の磁場ではソフト化が抑制されることが明らかになった。 Spring8(BL19)による放射光非共鳴(30keV)X線磁気散乱では、5K以下で反強磁性秩序による(0,0,7)磁気ブラッグ反射と磁場中メタ磁性転移後の(0,0,22/3)反射を観測し、メタ磁性転移後のフェリ磁性相の磁気構造を決定した。さらに反強磁性秩序相の高温側に隣接するc軸不整合相の磁気反射を観測することにも成功した。
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