研究概要 |
金属間化合物HoNi_2B_2Cは、超伝導転移温度(T_c〜7K)と希土類元素Hoのスピン秩序温度(T_N〜5K)がほぼ等しく、また磁気秩序と関連してリエントラント超伝導現象を示す。本研究は超伝導と希土類元素のスピン秩序の共存・競合のメカニズムを格子との関係で明らかにするために、Hoのスピン秩序に伴う弾性異常を超音波測定により観測し、磁気転移と超伝導転移温度の格子変形依存性を一軸応力下の磁化測定により調べた。 超音波実験では、種々モードの弾性定数の温度と磁場に対する依存性を詳細に測定した。1)C_<66>はc面内の磁気秩序(揺らぎ)と強く結合した結果、80Kの高温から顕著にソフト化し、約5Kで数10%に達する飛びを示すこと、2)(C_<11>-C_<12>)/2もc面内の磁気秩序と結合しているがC_<66>ほど顕著な異常を示さないこと、3)C_<44>はc面間の磁気相関と結合し、それが発達する10K近辺より低温で顕著にハード化すること、4)C_<33>はc面間の磁気秩序と結合し、低温でのメタ磁性転移に対応した磁場変化を示すこと、を明らかにした。4)の結果からはc面間の交換相互作用の距離依存性を求めることができた。 一軸応力下の磁化測定では、一軸応力の方向が[110]の場合、dT_N/dp=7K/kbarに及ぶT_Nの上昇が観測された。この上昇率は、以前に報告がされている静水圧での値の100倍に達する。他方、応力方向が[001]の場合、今回の測定範囲(0-200bar)では実験精度内で変化が観測されなかった。この結果は、磁気秩序がc面の変形に結合していることを示しており、超音波測定の結果と矛盾がない。本系では異方性の強いフェルミ面や異方的超伝導ギャップが提案されていることからT_cの一軸応力依存性を期待したが、[110],[100],[001]方向の何れの応力に対しても今回の研究では変化を観測するには到らなかった。
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