PrOs_4Sb_<12>やCeFe_4Sb_<12>などの充填スクッテルダイト化合物では、小さな振動数をもつ希土類イオンの局所振動(ratllingと呼ばれる)が観測されており、その重い電子や近藤半導体的振る舞い、超伝導などとの関わりが注目されている。そこで、このような系を記述する最も簡単化した模型として希土類イオンのf電子と局所フォノンとの電子格子相互作用を考慮に入れた周期的アンダーソン模型(周期的アンダーソン-ホルスタイン模型)を考えた。この模型に対して、電子間のクーロン相互作用と電子格子相互作用を同等に且つコンシステントに取り扱える動的平均場理論を適用してその電子状態を調べた。この理論において必要となる有効媒質中の不純物アンダーソン-ホルスタイン模型の解法には、これまで研究代表者がホルスタイン-ハバード模型に適用してその有効性を確認した厳密対角化法を用いた。電子格子相互作用gの増大と共に準粒子の有効質量と格子の揺らぎが共に増大し、現実的なgの値に対して有効質量が10〜100倍程度の重い電子状態が実現する。また、電子数がユニットセル当たり2個のハーフフィルドで化学ポテンシャルが混成ギャップの中にある場合には、混成ギャップが繰り込まれて10〜100分の1程度に小さくなる近藤半導体が実現する。この時、f電子の状態密度には繰り込みによる幅の狭い準粒子バンドや小さな混成ギャップに加えて、多重フォノン散乱によるブロードなピークが新たに現れる。一方、フォノンのスペクトル強度の計算から、重い電子や近藤半導体が実現する場合には、フォノンの振動数が繰り込まれて10〜100分の1程度に小さくなる顕著なソフト化がおこることが判った。
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