研究概要 |
本年度は、本研究課題を遂行する上で必要となるいくつかの圧力セルの製作と、それを用いていくつかの物質で圧力下でのドハース・ファンアルフェン効果の実験をおこなった。まず、非磁性硬度材料MP35Nを用いて、3GPaまでの圧力下で極低温・強磁場下の実験が可能となるピストンシリンダー型の圧力セルを製作した。この圧力セルは内径が5mmφと比較的大きいので、内部にピックアップコイルを導入でき、感度のよいドハース・ファンアルフェン効果の実験が可能となった。この圧力セルを用いて、UGe2,CeRhIn5およびCeIn3のドハース・ファンアルフェン効果の実験をおこなった。実験は現在も進行中であるが、ネール点が消失し、超伝導が観測される圧力近傍でそれぞれ特徴的な振る舞いが観測されている。 UGe2では、P^*(〜1.2GPa)と呼ばれる特徴的な圧力から、強磁性が消失する圧力Pc(〜1.5GPa)の圧力領域でドハース・ファンアルフェン振動が消失してしまう。一方、超伝導はこの領域でバルクで観測される。ドハース振動の消失は、伝導電子が非常に重くなっているか、あるいはフェルミ面の一部が消失してしまうことを示しており、超伝導発現機構との関連が示唆される。現在、これまで報告されている中で最も純度のよい試料を用いて、実験を継続しているところである。 圧力誘起超伝導体CeRhIn5は約1.6Gpaで超伝導が現れる。この圧力では反強磁性と超伝導が共存している。圧力下でのドハース・ファンアルフェン効果の実験では2.2GPaまでの圧力ではフェルミ面は変化しておらず、フェルミ面は局在的な4f電子の性質がまだ保たれていることを示している。現在より高圧の実験をこころみているところであり、反強磁性が消失し、遍歴的な4f電子が現れるかどうか非常に興味深い段階に来ている。 さらに、CeIn3では2.7GPaまでの実験を行った。ネール点が消失するのは、2.5GPa近傍と思われ、フェルミ面の変化が観測された。これからいろいろな磁場方向での実験とバンド計算との比較により、電子状態が局在的なものから、遍歴的なものへ変貌したのかどうかをより明らかにしていく予定である。 また、より高圧下の実験をめざして、インデンター型圧力セルとダイモンドアンビル型圧力セルの政策をおこなった。これらのセルを用いた実験はこれからの課題であるが、それぞれ5GPa,10GPa超の実験が可能となる圧力セルとなっている。
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