研究概要 |
正方三元化合物PrCu_2Ge_2が示す"非常に奇妙な磁化過程および磁化率の温度依存性"の機構解明を目的として実験を行った。 1)異常な振る舞いの試料依存;物性の試料依存性の有無を調べるために、いくつかの単結晶の育成を行い、物性測定を行った。その結果、この異常な振る舞いについては、試料依存はなく、本質的な性質であることを確認した。 2)電気抵抗の測定;ゼロ磁場中での抵抗の温度依存の測定および低温で磁気抵抗の測定を行った。温度依存では、磁化率等で異常のあった4K付近で、抵抗のとびおよびヒステリシスを観測した。したがって、この転移は、一次転移があることは確認できた。また、磁場依存では、磁化のとびに対して抵抗も変化しているようには見えるが、測定精度があまり良くなく変化があるとは断定できていない。 3)磁気構造;日本原子力研究所東海研究所の東京大学物性研究所中性子散乱研究施設(JRR-3)で実験を行った。ゼロ磁場下の低温において(100)などの反強磁性磁気散乱ピークの存在を確認した;低温では、波数ベクトルQ=(0,0,1)、磁気モーメント//C軸の単純な反強磁性構造であることを確認した。この(100)ピーク強度の温度変化において、4K付近で強度のとびがあることを見出した。また、5K以上の温度で、(100)等の磁気散乱にくわえて、新しい反強磁性散乱(0±τ00)(τ=0.965)を見出した。したがって、構造は不整合構造へ変化することがわかった 4)比熱測定の結果から、基底状態は二重項であること、核比熱から、超微細内部磁場は3Moe程度でPr単体と同じぐらいであること、を明らかにした。これらの成果は2004年3月の日本物理学会で発表した。また、2004年7月に強相関電子系の国際会議(カールスルーエ、ドイツ)で発表予定である。
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