研究概要 |
結晶場基底状態にΓ3四極子モーメント(2重項)を持ちTQ=0.4Kで反強四極子秩序を起こすPrPb3を非磁性物質Laで置換したPrxLa(1-x)Pb3の低温物性をLa全濃度領域で系統的に調べた。本実験は四極子モーメント系において始めて行われた系統的な非磁性不純物希釈効果の実験である。まず、X線測定よりLa全濃度域で構造変化はなく立方晶であり、また帯磁率測定より不純物系の結晶場はレベル間隔は変化するがΓ3基底状態に変化がないことがわかった。比熱測定よりPr濃度xの変化にともない3つの異なる特徴的変化を観測し、それぞれ異なった相の存在を示唆する結果を得た。 (1)x≧0.98:四極子転移出現。 (2)0.1≦x≦0.9:低温比熱が温度Tに比例。 (3)0.05≦x : C/Tがほぼ-lnTに従う非フェルミ液体的温度依存。 特に(3)領域についてはx=0.01,0.03,0.05ともに比熱C/Tがほぼ同様の温度依存を示し、特性温度を導入することで各比熱がスケール出来ることより非フェルミ液体的異常はPr四極子モーメントの単イオン効果として理解できた。また電気抵抗測定においても0.05≦xではT〜3K以下で抵抗の顕著な減少を観測しΓ3四極子モーメントと伝導電子の強い相関を示唆する結果を得た。一方、x≧0.2の濃度域では抵抗の顕著な減少は見られていない。以上より、0.05≦xで見られる異常は四極子モーメントに起因した近藤効果と考えられ初めて実験的に捉えられたのではないかと思われる。 またPrPb3と同じく結晶場基底状態にΓ3四極子モーメントを持つPrInAg2のLa置換効果でも非フェルミ液体的振る舞いを見出した。
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