研究概要 |
中原とSalomaaは,超伝導量子ビットにおけるデコヒーレンスを克服する方法として,外界との相互作用を遮断するのではなく,多量子ビットゲートをモジュール化するデザインを研究し,それが量子ゲートの作動時間を飛躍的に減少させることを示した.さらにこのモジュールを用いてShorのアルゴリズムを超伝導量子ビットで実装する提案を行った.中原は近藤と協力して,量子アルゴリズムの加速をNMR量子コンピュータで実証する実験を行った.また,中原は大阪市大の谷村たちとStiefel多様体における接続に付随するホロノミーを用いて量子計算を行うホロノミック量子計算を解析,Hadamard, CNOT, SWAPなどの基本ゲートを1ループで実現する厳密解を数学的に構成した. 細谷はCarliniとブラックホール(BH)時空におけるホーキング輻射の量子情報理論的解析を行い,BHの外側で粒子を測定しその測定器をBHに放り込むとき,全エントロピーの変化の下限は、放り込まなければ得られた知識量であることを示した.Buchertと森田とともに古典宇宙論において非一様宇宙とフリードマン宇宙の違いを定量化するために情報理論を応用し、上記の宇宙の質量分布に対して相対エントロピーを導入した.物質優勢の宇宙の場合に、相対エントロピーが増大する条件を求め,非一様性が小さい場合は必ず増大することも示し,国際重力相対論学会のhonorary mentionを受けた。 JoyntはSiGeヘテロ構造のスピン量子ドットを研究し、フォノンの吸収・放出によって生じるスピン緩和によるデコヒーレンスは、大きな障害ではないことを示した. 近藤は近畿大学の500MHz NMR装置を使って量子コンピュータを実現した.また中原と協力し,量子アルゴリズムの加速を実現するパルス列のプログラミングを行った. 黒田は量子ビット素子として期待されているMn_<12>核錯体に対して、従来の醋酸基に変えてリン酸基を有する架橋基を導入した新規なMn_<12>核錯体を合成し、その構造解析と磁性測定を行った。このリン酸基が単一分子磁石としての特性を有することを明らかにした。
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