研究概要 |
(1)ガラス転移近傍での普遍的法則の研究 研究所に設置されているスーパーコンピュータを用いた、剛体球系に対する、二種類の大規模計算機実験(分子運動学的シミュレーション、ブラウン運動学的シミュレーション)により得られたデータの分析を下に,次の新しい普遍性を見出した。 1)コントロールパラメータを変化させて行くと、長時間自己拡散係数はある特異点でゼロとなるような、漸近的曲線で記述される。 2)漸近曲線の関数は異なるメカニズムに対して普遍で、特異点や含まれる係数のみがメカニズムに依存する。 3)メカニズムに依らず、徳山により提案された、平均二乗変位に対する非線形分子場方程式が成立つ。現在は、コロイド系に限らず、ガラス形成物質一般においても、同様な普遍性が成立つことを示すべく研究を続行中である。 (2)高荷電希薄コロイド分散系におけるガラス転移の可能性の研究 高荷電希薄コロイド分散系でのコロイドの凝集やボイドの形成のメカニズムはいまだ理論的によく理解されていない。それで最近徳山は、荷電コロイド分散系でのガラス転移現象の説明を試みるために、荷電コロイドと対イオンの間に働くクーロン引力相互作用による多体効果を考慮し、コロイド間に働く徳山有効引力ポテンシャルを提案した。そのポテンシャルの下に、研究所に設置されているスーパーコンピュータを使い、計算機実験を実行し、高荷電希薄コロイド系において、ガス相のみならず、液滴相および固滴相を見出し、新たな相図を提案し、且つ、液的及固滴成長の新しい法則を見出した。現在は、より現実的なモデルの下に、大規模な計算機実験を続行中である。 (3)国際会議の開催 徳山は、ガラス転移現象のメカニズムを解明する為に、この分野で活躍する研究者(国外3名、国内4名)を仙台に集め、第2回複雑系国際ワークショップを12月9-11日に開催した。発表者の持ち時間を1時間としたことにより、活発な研究討論・議論が集中的になされ、これからの共同研究の大いなる礎となった。
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