研究概要 |
密度汎関数論理と多体電子論の融合を目的として、以下のことを行った。 (1)LDA+U法の開発と応用(密度汎関数の枠内で電子間クーロン相互作用による、電子密度およびスピン密度の大きな揺らぎをあからさまに取り入れる方法論の開発と応用) :第一原理電子構造計算を強相関系に取り入れるもっとも容易な方法として発展してきたLDA+U法により、La_<1-X>Sr_XNiO_4を調べた。結果的にこの系はLDA+Uで解析できるものではなく、現在は「軌道縮退のあるハバードモデルでの厳密対角化」の方法による研究に発展している。 (2)GW近似の新しい展開と応用(多電子問題の論理の枠内で、摂動展開によって電子密度の動的な揺らぎによる遮蔽効果を取り入れた方法論の開発と応用) :遷移金属、遷移金属酸化物、Hf0その他の系でGW近似を適用し、また誘電関数、エネルギー損失スペクトルなどを計算し、実験とよい一致を得た。さらにスペクトルを解析し、それぞれのピークの起源を明らかにした。さらに単位胞により多くの原子を含む反強磁性LaMnO_3は系が大きくなって、従来、GW法では計算できなかった。計算手法を改善し、実質的に計算スピードを50倍以上とし、これらの系を計算できるようにした。その結果、バンドギャップおよびスペクトル形状ともに実験をよく説明する結果を得た。またエネルギーに依存したオンサイトおよびオフサイト・クローンエネルギーを求めた。酸素からMnへの励起による電子一正孔対による遮蔽が10〜20eV程度の領域で大きなエネルギー依存性の起源になっていることを見出した。 (3)DMFT+LDA(クーロン相互作用に基づく電子密度およびスピン密度の大きな揺らぎに注目した多体電子系の方法論である動的平均場理論と第一原理電子構造計算手法の融合と応用) :DMFTを用いて軌道縮退がある場合の金属-絶縁体転移に伴う臨界的なU/W(クーロン相互作用U・バンド幅W)依存性を計算した。従来いわれているような軌道縮重によりU/Wが大きくなるのではなく、格子構造が重要であることを見出した。またs,p,d,軌道を同じように取り入れた方法を逐次摂動近似の枠内で定式化し、プログラムを開発した。
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