非平衡緩和法は平衡相転移を研究する数値解析法である。これまでの研究で、2次相転移において転移温度と臨界指数を精度良く容易に求められることが示されていた。平衡解析では実現不可能な大きなサイズの系で信頼度の高い結果を得ることができる。また、フラストレーション系やランダム系など緩和の遅い系においても、効率や信頼度を損なうことなく適用可能なのも大きな特徴となっている。本研究の目的は、この方法を2次相転移を越えて、様々な相転移へ応用することである。特にKosterlitz-Thouless(KT)転移系は、低温相で常に臨界的な振る舞いが現れ、2次相転移で用いられているような通常の数値解析法が十分に機能せず、満足のいく結果を得ることが難しかった。 14年度:転移温度の評価法を確立した。高温側における秩序変数の緩和を数値的に計測し、スケーリング解析で各温度における緩和時間を決定する。得られた緩和時間の発散の様子から転移温度が求めるのである。この評価法は、非常に汎用性があり、様々なKT転移系へ応用された。三角格子反強磁性XY模型や正方格子Fully-Frustrated XY模型、ゲージグラス模型、2次元の粒子系における溶融転移などである。次に、転移温度における臨界指数の評価法を確立した。2次相転移で用いられた解析法をKT転移系で再考し、これまで計算が難しくあまり議論されてい来なかったKT転移系の臨界指数の研究に道を開いた。一次相転移の正確な転移温度の評価法も確立した。 15年度:前年に開発したKT転移系の臨界指数評価法を様々な模型に適用し、KT転移の臨界指数を系統的に調べ、これまで触れられることの少なかったKT転移の普遍性に関する議論をした。この他、スピングラス系の普遍性に関するランダムネスの影響を調べた。
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