液晶の秩序は柔らかいため容易に界面の影響を受け、体系が十分薄ければバルクの相転移と一見違うような相変化となる。しかし液晶分子自体に変化があるわけでないので、分子間の相互作用はバルクでのものと同じであると考えてよい。界面では内部と異なり壁面分子からの力が液晶分子間のものとは異なるので不均一性が現われる。この界面の異方性が相互作用により体系内部に伝えられるが、本研究で界面の効果を場所に依存する実効的外場として表現し、外場の温度変化をバルクの外場-温度相図上での変化に基づいて薄い体系での現象を考察するという方法を提案した。この考えで、ネマティック秩序、スメクティック秩序および強誘電性液晶自己保持膜を論じた。 界面が秩序を促進する場合を考えるが、その場合実効的外場は正である。相転移が2次であれば特異点は外場Oの領域に留まるため、相転移は起らないことになる。したがって、バルクでは相転移が1次である体系が解析の対称となる。ネマティック秩序およびC7と略記される強誘電性液晶では相転移は1次であり、またスメクティック秩序も1次になりうる。この点からこの体系を論じた。 ネマティック液晶の一般的な相図の概要を得たが、これは3次元3状態ポッツ模型のものと同様なものであることが示され、種々のアンカリング条件と相転移の変化の関係が総括された。また垂直配向壁の場合が具体的に解析され、相転移が消失する臨界厚さ以下で起る連続変化ではバルクでは起りえない不安定状態が介在するという新奇な機構を解明した。強誘電性自己保持膜においても同様の機構が示された。スメクティック秩序についてはバルクの相図を完成し、厚さによる相転移の変化の概要を得た。
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