研究課題/領域番号 |
14540359
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井戸垣 俊弘 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40038013)
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研究分担者 |
竹田 和義 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10029548)
村岡 良紀 有明工業高等専門学校, 助教授 (60229953)
田中 彰則 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (80274512)
河江 達也 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (30253503)
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キーワード | 競合スピン系 / 双極子 / 4重極子 / 部分無秩序相 / 交代秩序相 |
研究概要 |
磁性体においては、相互作用の競合によるフラストレーションを反映して、変調周期構造・スピングラスといった独特の磁気秩序や、スピンの向きの秩序である双極子秩序(DLRO)の他にもスピン軸の秩序に対応する4重極子秩序(QLRO)が独立に出現することが知られている。ここでは、以下の2つイジングモデルに対してモンテカルロ(MC)シミュレーションと解析的な手法を利用することにより、それぞれの系についてDLRO(QLRO)の部分無秩序相(交代秩序相)の出現機構と安定性を詳細にしらべた。 1.BBモデルの磁気相図と4重極子交代秩序相 一様な双2次交換相互作用J'をもつスピンS=1の±Jイジングモデルの完全な磁気相図をMC計算で作成した。この系では、双1次相互作用±J同士の競合や、双1次と双2次相互作用の間の軸性秩序に関する競合があり、基底状態は多重に縮退してくる。このため、メタステイブルな状態に陥りやすく、緩和時間が非常に長くなるため通常のMC計算では膨大な計算時間を要する。ここでは、この難点を避けるために、最近開発された非平衡緩和MC法をこの系に初めて適用した。その結果、QLROの交代秩序相への転移やDLROのリエントラント現象へのランダムネスの効果、スピングラス領域の臨界緩和に対する双2次交換相互作用の影響等の解明に加え、各相転移の臨界指数の計算からユニバーサリティークラスを議論出来た。 2.ANNNIモデルの磁気相図と部分無秩序相の確定 強磁性面が積層し、この積層軸方向の最隣接および次隣接層間相互作用J_1,J_2が互いに競合する符号を持つイジングスピン系を軸性次隣接イジング(ANNNI)モデルという。このような競合系では、双極子の秩序相と無秩序相が副格子を形成して共存する部分無秩序相が出現する可能性がある。ここでは、層内相互作用の大きさが積層軸方向に沿って交互に変化する16層までの超格子について、各温度、各相互作用比で安定化する変調磁気構造と全体の磁気相図を作成した。その結果、変調波数k=1/4,1/8,3/16を持つDLROの部分無秩序相が出現する可能性を見出した。また実際に、最大80×80×80までの系についてMC計算を行って、部分無秩序状態にあると予想された副格子の磁化が消失し、スピン相関も常磁性的な振る舞いを示すことを確認出来た。現在は、各転移の臨界的な性質を明らかにするために、臨界点近傍でのヒストグラムMC計算を実行中である。
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