研究概要 |
末崎らはブルガリア科学アカデミー固体物理学研究所長A.G.Petrov氏とともに、膜の電気弾性効果(flexo-electrocity)を応用して、膜の曲率に敏感なイオンチャンネルを仕込んだmembrane machineの理論的モデル系を構築する共同研究を始めた。電気弾性効果は、光に感受性のあるラジカルを膜に仕込んで、光照射によって膜を介して電圧を与えて膜の自発曲率を生じさせ、脂質膜ベシクルを変形させようとするものである。このプロセスにより、周期的な運動をする人工的な膜機械を実現させるような系を解析している。この結果は2003年物理学会九州支部例会において発表したが、初期的解析結果の発表は梅田らとともに準備中である。 さらに末崎らはこの科学研究費の研究テーマとは直接関係ないが、高分子や界面活性剤などの複雑液体のレオロジーで観測されている、せん断応力下での相分離の生成機構についての理論的研究を行った。その骨子はせん断応力の関数として2状態を取る粘性係数を仮定すると、円盤と平面形状のレオメータにおいてこれまでなかった楔形の相分離が予測されることが分かった。この結果は第3回複雑系のスローダイナミックス国際会議(2003、仙台)で発表した。最終結果は論文として発表予定である。 梅田らは界面活性剤の存在下でのベシクルの周期的揺動現象に関して,昨年度に引き続き理論と実験との比較を行い,界面活性剤の影響で膜に穴が開きやすくなっていることを明らかにした。現在論文を準備中である。また,カップ状ベシクルの形態転移の要因を調べるため,弾性体理論に基づいてベシクルの形態を計算する計算機プログラムを完成させ,様々なパラメータを与えて数値計算を行った。これらの結果を日本物理学会で発表した。さらに解析をまとめて平成16年度には論文として発表するよう準備中である。
|