研究概要 |
本課題の対象となるメゾスコピック系ではコンダクタンスの値でなく分布関数が大切となる。この分布関数がdephasingによってどのように変更されるかは大変興味深い。そこで本年度はコンダクタンスの分布関数を詳細に調べた。(5番目と6番目の発表論文参照。)これによりコンダクタンスが量子化コンダクタンス程度になると,コンダクタンスの分布は透過係数行列の最大特異値でほぼ決定されることが明らかになった。また,量子ホール効果のdephasingを調べるには,エッジ状態の性質を調べることが重要となるので,本年度はエッジ状態の振る舞いを研究した。(3番目の発表論文参照。)スピンが関連したdephasingを調べるため,本研究ではスピン軌道相互作用が強い2次元系を調べた。Dephasingを議論するモデルとして最も簡単なモデルは3端子系である。そこでT型3端子系におけるコンダクタンスやスピンコンダクタンスの振る舞いを議論した。(2番目の発表論文参照。)またスピン軌道相互作用が非一様な系におけるスピンコンダクタンスを議論した。この場合はフォーク型の3端子系を議論した。(4番目の発表論文参照。)こうした2次元のスピン軌道相互作用が強い不規則系ではAnderson転移が生じることが知られている。この転移がより低次元でも生じるかどうかは,1/4世紀もの間解決されていなかった。本研究ではスピン軌道相互作用が強い系の研究の延長として,2次元よりもわずかに小さいフラクタル構造上の不規則電子系を扱い,スピン軌道相互作用によってこうした2次元以下の系でもAnderson転移が起こることを明らかにした。
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