非平衝状態から如何にドメインが発達し平衡状態へ至るか?という広い問題に対して、部分的に縮退が解けた二等辺三角格子反強磁性体のモデル物質であるCoNb_2O_6を用いて、幾何学的スピンフラストレーション系に特有な磁区成長過程を中性子散乱、帯磁率、CHB法によるモンテカルロシミュレーションを用いて調べている。四重縮退した反強磁性基底状態への磁場クエンチ後の平均反強磁性磁区長の時間発展が、フラストレーションのないイジング反強磁性体における成長指数0.5にくらべ極めて小さい成長指数〜0.2のベキ則に従うが、これは定性的には磁壁の曲率の最小化が駆動要因ではなく、磁区境界の分子場がcancelした磁気鎖のStochasticな反転が駆動要因であるためであると理解が進みつつある。帯磁率の長時間緩和から推察される三重縮退のフェリ相での予定されていたHMIでの中性子散乱(PHY-01-1128)による直接的な磁区成長の探査はHe3冷凍機準備のためH15年度初頭に延期された。また、この磁区成長を理解するために、磁性イオンCo2+を非磁性イオンMg2+で僅かに希釈することにより磁区成長を司る磁気鎖のStochasticな反転を制御したところ、僅か1%の微量希釈で、反強磁性基底状態が位相分断され消失し見かけの不整合相を与えること(submitted to Phys. Rev. B)が、また、0.5%程度の希釈では低温で反強磁性基底状態が生き残るが、その磁区成長過程では二等辺三角格子の幾何を反映して異方的なpinningによる磁区成長の異方的な抑制効果(submitted to ICM2003)が見られた。
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