研究概要 |
反強磁性的相互作用を持つ量子スピン系における無秩序状態の研究を継続して行った. 昨年度は2次元正方格子上の量子ハイゼンベルク模型(J1-J2模型)に対する非線形シグマ模型の方法の定式化を完成させた.この定式化は,古典解が反強磁性秩序を持つ量子スピン系であれば他の2次元格子の場合にも,拡張によって基本的には適用可能である.本年度は,正方格子に近い異方的な三角格子に対して定式化をおこなって,無秩序相の性格を調べた.異方的三角格子ではパラメータの値によって異なった無秩序相が形成される可能性があり,これらを判別できるか,正方格子に生ずる無秩序相と同じ性格のものかどうかが問題である.ここでは,あるパラメータ領域の無秩序相が,正方格子の場合の無秩序相と連続しており,基本的には同じものであることが解った. 一方,異方性のない三角格子などのようにフラストレーションが強く,古典解が120度構造などであるような2次元量子スピン系への拡張は容易ではない.本年度は,古典解が反強磁性秩序とは限らない一般的な2次元系にも適用できるように,非線形シグマ模型を定式化することを目指した.そのため,これまでの定式化を詳細に検討し,問題点の抽出と分析を行った.その結果,一般的な定式化に向けての道筋をほぼ明らかにすることができた. 1次元量子スピン系に対する非線形シグマ模型の方法に関しては,側鎖がある場合に定式化を拡張した.側鎖によってハルデイン・ギャップが生じる条件が影響を受けることが解った.
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