(1)前年度までに、一次元周期境界条件を用いたHartree-Fock法、二電子積分変換、二次Moller-Plesett摂動法、coupled-cluster(CC)法、equation-of-motion CC(EOM-CC)法のプログラム開発を進めてきた。今年度は二次摂動法もしくは逆Dyson方程式を解く方法でバンドギャップを求めるプログラムを追加したほか、新しく導入されたスーパーコンピュータHitachi SR11000への移植等を行った。ポリエチレンの励起状態への適用では、EOM-CC法によって求めた一重項エキシトンの励起エネルギーは実験値と良く一致した。また、励起エネルギーのシステムサイズ依存性をEOM-CC法とTDDFT法で比較したところ、一重項励起エネルギーは両者でほぼパラレルに変化するが、三重項ではシステムサイズが増加するにつれてTDDFT法の励起エネルギーが顕著に減少し、EOM-CC法の励起エネルギーとの差が急速に拡大する結果が得られた。これは、DFT法で用いられている交換相関関数の欠陥によるものと考えられる。その他、ポリジアセチレンのエキシトン励起状態の計算も行い、ポテンシャル関数等を求めた。 (2)ポリジアセチレンの基底状態にはポリエチレン型(PDA)とブタトリエン型(PBT)の結合状態がある。PDA-PBTの構造変化に対するポテンシャル関数をHartree-Fock法、スピン制限型DFT法、スピン非制限型DFT法で計算して比較した結果、計算手法によってポテンシャル関数の形が大きく変化することを見出した。 (3)励起状態を求める方法の一つであるBethe-Salpeter方程式を四点表式から二点表式に簡略化する方法を考案し、この手法においてTDDFT法の交換相関核fxcと摂動論の核Wがfxc=-W/2で関係づけられることを示した。また、エネルギー依存性を持つオンサイトクーロン相互作用UをRPAを用いた第一原理計算から組み立てる方法を提案した。
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