研究概要 |
(1)排除体積効果のみを膜間相互作用とする多層膜系の単位体積あたりの自由エネルギーの膜密度展開の各係数を一枚の膜の揺らぎと関連付ける近似法を考案した。 (2)膜間隔分布関数に基づく厳密な結果 膜間のエネルギー的相互作用が短距離斥力ある場合、それに伴う単位体積あたりの自由エネルギーの変化は膜密度の4乗以上のべきの部分に現れることをMonte Carloシミュレーションで求めた膜間隔分布関数を用いて厳密に示すことができた。 (3)臨界点近傍の共存曲線の解析 多層膜系の濃厚相と希薄相が共存する共存曲線の臨界点近傍の振る舞いは完全に古典的であることを示せた。また、非古典的な臨界現象を記述できる非解析的ランダウ展開法を提案しその基礎付けと高分子系への応用をおこなった。 (4)多層膜の凝集不安定性の発見 膜間引力が温度の効果に比べて大きいとき、希薄相は溶媒のみになる。この場合の濃厚相の膜の揺らぎを高次元微斜面描像と膜間隔分布関数に基づく解析について調べた結果,長波長の熱揺らぎに対して不安定であることが発見された。このことは以下のことを示している。 (i)膜間引力により集まった多層膜(凝集多層膜)が平板状であるサイズに限界がある(膜間引力によるPersistence Length(PL)の有限化)。 (ii)膜間相互作用のうち引力が主導的な場合ラメラ相が低温で不安定。 (iii)PL程度の揺らぎは膜の剛性率のみで決定される。 (5)水分子等の低分子が膜を透過することによる膜ダイナミックスの精密化をおこなった。
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