1.多層脂質二重膜系を高次元微斜面描像で記述することにより、長波長ゆらぎのエネルギーには膜方向波数の2乗の項が存在し且つそれが支配的であることを示し、そのことをMonte-Carlo計算で確認した。 2.膜間の非交差性の効果を一般的に議論するため、座標のn階微分で記述される一般化された膜描像と二次元膜を一次元紐に変換する異方的粗視化法を考案した。前者より、自己無撞着近似法を用いる際のrelevant項の決定方法がわかり、後者より自由エネルギーを膜密度で展開したときの展開係数と孤立膜のゆらぎの関係を得ることができた。 3.膜間相互作用ポテンシャルによる膜間非交差条件のみの系(非交差膜系)の自由エネルギーからの自由エネルギーの変化分を非交差膜系の膜間隔分布関数で記述する方法を考案した。膜間隔分布関数をMonte-Carlo計算で求め、短距離ポテンシャルによる影響は膜密度の4乗以上の高次項で現れることを示した。 4.膜間引力ポテンシャルによる自由エネルギーの変化分が膜密度の2乗、3乗、4乗から現れる場合について膜系の相図の特徴を解析した。それぞれ、有限膜密度と溶媒のみの系との相共存(膜凝集とよぶ)の発現、膜凝集の発現と三重臨界点の存在、二相共存と膜凝集の発現という特徴を持つことを示した。また、膜の凝集現象における遅い緩和をGinzburg-Landau方程式で解析し、ダイナミックスは指数緩和で緩和時間は非交差効果と引力の強度の比できまることを示せた。 5.膜が凝集した状態は熱ゆらぎに対して不安定で、膜系が平板状態でいられるサイズに限界があることを示した。これは膜間相互作用のうち引力が主導的である場合、ラメラ相が低温で不安定であることを意味する。 6.膜系の自由エネルギーを膜密度展開で一般的に記述する必要より非解析的Landau展開法を考案し、高分子溶液系の共存曲線解析に適用しその妥当性を示した。 7.水分子などの低分子が膜を透過することによる膜ダイナミックスの一般論を構築し、マイクロカプセル系に応用することで妥当性を確認した。
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