研究概要 |
量子計算機をとりまく環境からの擾乱による影響を論じる基礎になる理論の構築を行った。その理論の概要は次のようなものである: まず、任意の自由度N(>>1)の系の様々な量子状態を、1.クラスター性があるかどうか、2,相加的物理量の揺らぎがNのどんな冪のように振る舞うか、という2つの観点から分類した。 続いて、分類されたそれぞれのグループの状態について、古典ノイズや環境からの弱い擾乱に対する安定性を分析し、ディコヒーレンスレートが、Nの1乗よりも高い冪になるような状態をfragileな状態と呼ぶことにした。その結果、normally-fluctuating statesと名付けた状態は、どんな古典ノイズや環境からの弱い擾乱に対してもfragileにならないことが解った。一方、anomalously-fluctuating statesと名付けた状態は、ノイズのスペクトルによってはfragileになることが解った。さらに、局所測定に対する安定性、という概念を提出したそして、クラスター性がある状態は局所測定に対して安定で、クラスター性がない状態は局所測定に対して不安定であることを示した。これは、逆も言える。これから、クラスター性がない状態は局所測定を繰り返すと、クラスター性のある状態に変わってゆくことを示している。 この結果は、直ちに量子計算機に応用できるものである。
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