グローバーの量子探索アルゴリズムについて、次のことを解明した: (i)マクロにエンタングルした状態が使われるかは、解の数と性質に依存する。 (ii)解の数が0(1)個である場合は、古典計算機で解くのは指数関数的に困難であるが、その場合には、必ずマクロにエンタングルした状態が使われる。 (iii)解の数が0(N)個である場合は、古典計算機でも解くのは容易であるが、その場合には、マクロにエンタングルした状態が使われるかどうかは、解の性質に依存する。 これと、今までに行ったショアの素因数分解アルゴリズムの結果とを合わせると、次のことが結論できる: (a)古典計算機で解くのが困難な問題を量子計算機で効率的に解こうとすると、必ずマクロにエンタングルした状態が使われる。その意味で、マクロにエンタングルした状態を利用することは、量子計算において本質的である。 (b)一方、古典計算機でも解くのが容易であるような問題を既存の量子アルゴリズムで解くときにも、マクロにエンタングルした状態が使われることがある。しかし、これは単に、容易な問題に対しては既存の量子アルゴリズムが最適化されておらず、必要もないのにマクロにエンタングルした状態を使うことになっているだけだろう。 この他にも、一般の多体系のマクロエンタングルメントの理論や、一般の測定による量子ゼノ効果などの研究を行い、特に後者は、Physics Report誌の招待レビュー論文になった。
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