研究課題
基盤研究(C)
まず、量子計算機への擾乱の影響を論じる基礎になる理論の構築を行った。即ち、環境からのノイズや局所的な測定に対する、多体量子系の安定性の一般論を構築した。そして、量子計算機のような、空間的に広がった多体量子系のエンタングルメントの尺度として、相加的な演算子の最大ゆらぎの、系のサイズに対する依存性を用いる事がきわめて有効であることを示した。そして、その尺度を用いて、量子計算機のなかにマクロなエンタングルメントが使われていることをはっきり示した。即ち、(a)古典計算機で解くのが困難な問題を量子計算機で効率的に解こうとすると、必ずマクロにエンタングルした状態が使われる。その意味で、マクロにエンタングルした状態を利用することは、量子計算において本質的である。(b)一方、古典計算機でも解くのが容易であるような問題を既存の量子アルゴリズムで解くときにも、マクロにエンタングルした状態が使われることがある。しかし、これは単に、容易な問題に対しては既存の量子アルゴリズムが最適化されておらず、必要もないのにマクロにエンタングルした状態を使うことになっているだけだと考えられる。また、量子計算を論じる上で,量子測定の理論の整備は欠かせないが、その量子測定理論の最も基本的な研究課題である量子ゼノ効果について、測定器の一部を量子系の一部として扱うきちんとした測定理論で解析し、いままでの常識を覆す結果を見いだした。そして、Physics Report誌にレビュー論文を執筆するように要請された。さらに、一般の状態へのマクロエンタングルメントの概念を拡張し、その検出法を見いだした。
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