エバネッセント波レーザー光の合成によって形成される格子状局所的回転電場により、誘電体表面近傍の冷却Cs原子団の二次元スピン偏極パターンを形成し、その放射特性のスピン依存性を詳細に調べ、光近接場における広義の共振器量子電気力学効果が、原子と放射場の近接場相互作用における角運度量選択則やパリティー保存にもたらす質的な変化を解明することを目的として、実験研究と理論研究を並列して行った。実験研究では、前年度に存在を実証した表面の法線を軸とする局所回転電場格子をなす(1)光近接場を発生させる光学装置と、これまでに製作を進めてきた、(2)二次元原子格子からの極微弱散乱光検出系、(3)蛍光面付マイクロチャンネルプレートと冷却CCDカメラを併用した観測系を持つ、レーザーCs冷却原子団のスピン偏極格子状配列生成装置に、(4)静電レンズによる生成イオン誘導装置を設計製作して組み込み、近接場光共鳴イオン化顕微分析に必要なイオン収束特性およびマイクロチャンネルプレートによる解像度などの諸特性を測定した。これに基づいて装置完成に向けての技術的考察を行った。さらに、(5)光近接場偏極格子による偏極効率を十分な信号強度で計測可能な、改良型原子冷却装置を製作するとともに、原子誘導光学系による感度の向上を検討し、最終的に定在波レーザー光ポンピングによる、縞状のスピン編極原子の二次元格子生成・観測の技術開発を推し進めた。 理論研究では、近接場相互作用をトンネル現象として記述する理論的枠組みを構築するとともに、表面での多重散乱と原子準位のミキシングを理論的に評価し、表面近傍での自然放出におけるスピンに依存する遷移の選択則の変調効果を解析した。
|