本研究の目的は、従来の群速度が破綻する領域において意味を持つ、屈折率の虚部の効果を取り入れた新しい群速度の定義の有効性を光学領域での実験的によって検証することである。 平成14年度における理論解析、計算機シミュレーションの成果に基づいて、平成15年度は、科研費交付金によって改良したマイケルソン干渉計とチタンサファイアレーザーシステムを使用してパルス伝播の実験を進めた。 (1)回折格子対により位相がダウンチャープしたフェムト秒パルスを作り出し、共鳴吸収媒質中の伝播を系統的に実験的に調べた。 (2)入射周波数を共鳴線の短波長側、長波長側に同調した場合、それぞれ、負の遅延と正の遅延が得られた。 (3)このとき、出射スペクトルは大きなスペクトル変化が起こっていることが確認された。これは、Kromas-Kronigの関係によって必然的に存在する屈折率の虚部(吸収)の効果と考えられる。 (4)ポインチィングベクトルの時間積分の重心でパルスの位置を定義し、実験結果をNet delayとReshaping delayに基づいた解析と比較しよい一致を得た。 これらの結果から、新しい群速度の有効性が位相変調を受けたパルスの伝播においても確認できたと考えている。引き続き、不規則な波形を有するインコレントパルスの伝播に対して、新しい群速度の有効性を確証する実験を進めていく予定である。
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