研究概要 |
昨年度までの研究で、ある種の共形場理論の基底状態と微分方程式系の対応に関して様々な知見がえられた。本年度は前者の励起状態の構造が後者にいかに反映されているかに関して研究をおこなった。その結果、3階の微分方程式系と対応するW3共形場のヒルベルト空問に関して、「微分方程式系の特異点」とW3共形場における特異ベクトルに興味深い対応がえられた。この結果に関して現在論文を準備中である。 共形場理論の変形問題は、技術的に上で述べた問題と非常に近い。長らく懸案であった、Virasoro minimal模型に関する(1,2)摂動に関しての熱力学的ベーテ仮説方程式に対して、これまで個別的に得られていた結果を統一的に網羅する一般論を構築する事に成功し、論文2として発表した。 またこれまでの研究のまとめとして、完全WKB法への可積分構造の応用、とくにトンネル効果への非線形方程式およびベーテ仮説法の応用に関する講演を2004年度6月京都大学数理解析研究所での国際シンポジスム「Recent trends in exponential asymptotics」でおこなった。内容は数理解析研講究録に投稿中である。 また、本年度は当該研究課題の最終年度にあたるため、3年間の研究課題のまとめとして、2004年度7月に静岡大学において「量子力学のニューフロンティア-PT対称性、擬可解性、厳密WKB法」と題する国際会議を主催した。内外の中核的研究者約25名を集めて、先進的話題に関して活発な議論がおこなわれた。今後この分野の研究の指針を決定する重要な会議になったと考えられる。
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