研究課題/領域番号 |
14540378
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野崎 浩二 山口大学, 理学部, 助教授 (80253136)
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研究分担者 |
山本 隆 山口大学, 理学部, 教授 (00127797)
朝日 孝尚 山口大学, 理学部, 教授 (30184154)
浦上 直人 山口大学, 理学部, 講師 (50314795)
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キーワード | n-アルカン / 真空蒸着膜 / 分子配向 / 固相転移 / 秩序無秩序型相転移 |
研究概要 |
ソフトマテリアル系の基本構造である炭化水素系長鎖分子で最も簡単な分子構造を持つ、n-アルカンを用い、昨年度に引き続き真空蒸着膜の構造を調べた。真空蒸着時の蒸着速度、基板温度、基板種類等の成膜条件および分子鎖長が蒸着膜の構造、特に、基板に対する分子配向に及ぼす影響を系統的に調べた。今年度は分子配向挙動の基板依存性に焦点を合わせ、ポリイミド基板、Si基板を用いた時の分子配向の膜厚依存性を調べ、2つの特異な異法的分子配向出現メカニズムとその基板依存性に関して結論を得た。ある蒸着条件において、ポリイミド基板を用いると、蒸着時間(膜厚)によらず、アルカン分子は基板に対して分子軸を垂直に配向させ配列する(垂直配向)。一方、基板にSiを用いると蒸着時間が短い(膜厚の薄い)段階では垂直配向が支配的に成長するが、蒸着時間増加に伴って分子軸が基板に平行に配向した(平衡配向)領域の割合が増加する。ある蒸着条件では蒸着初期ですでに平行配向領域が形成されていることが確認されたが、別の条件ではあきらかに途中の段階で平行配向領域が生成する。通常、基板による分子配向挙動の違いは基板と分子の直接的相互用に支配されると考えられるが、そうであれば、ある基板では蒸着時間によらず垂直配向領域のみしか生成しないのに対し、ある基板では途中から平行配向領域が生成する実験事実は説明できない。この基板依存性に関する事実は、使用する基板と蒸着分子の直接的相互作用を遮蔽する工夫を施した実験においても確認された。結局、蒸着の素過程を考えた時、気相中を飛んできた分子が吸着した際に運動エネルギーを熱として拡散させる必要があり、その拡散が基板を含めた蒸着膜全体の熱容量や熱伝導率に支配されるため、速度論的な要因が作用し、分子配向挙動の強い基板依存性が生じるものと結論した。 今までは飽和炭化水素鎖の構造形成を中心に研究してきたが今年度は不飽和炭化水素鎖の構造形成に関する研究に着手した。具体的には主鎖内に2重結合を含むトランス1,4ポリブタジエンを用い、低温の秩序的結晶相から構造の乱れを有する特徴的な高温相への秩序無秩序型固相転移での構造形成に注目した。特に、以前報告されていた高温相の構造が実験事実に矛盾することをつきとめ、実験事実をよく説明する構造モデルを提案した。この特徴的な高温相は他のn-アルカン回転相やポリエチレンの高温相など他の炭化水素鎖系分子に見られる凝集相と類似しており、CONDIS結晶として統一的に捉える試みの動きもある。これらの統一的な理解のきっかけとなる可能性がある。
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