研究概要 |
1.無限自由度完全可積分ハミルトン力学系の数学的構造を援用して,非粘性流体中の渦管の3次元自己誘導運動速度に対する有限太さの効果についての高次補正項を導出した.Biot-Savart法則の漸近評価およびEuler方程式の接合漸近展開法を高次まで拡張した. 2.XeClエキシマレーザー・パルスをCoコートした基板上に照射すると,渦糸が生成され瞬時に急冷凍結する.渦糸のうねりが背景流のずりに起因するとして,局所誘導近似のもとでの不安定性解析によって時間スケールを推定し,電子顕微鏡の静止画像から動的描像を抽出した. 3.楕円渦や渦輪の3次元線形不安定性を,ハミルトン的スペクトル理論の観点から計算した. (1)純粋ずり流が渦核断面の円形対称性を破って楕円に歪ませる.楕円渦上の線形撹乱および固有値をBessel関数を用いてあらわに書き下すことに成功した.さらに,短波長での楕円型不安定との関係を明らかにした. (2)渦輪においては対称性を破る摂動は曲率効果である.局所方位波数の差が1の2個のKelvin波同士がパラメータ共鳴不安定を起こすことを発見した. 4.レイリー・ベナール対流の正六角形格子上でのパターン形成に対する非線形縮退の影響を調べた.中心多様体低減を行って5次の振幅方程式を導出し,係数を数値的に計算した.密度の2次の温度依存性を開折パラメターにとって縮退点近傍での分岐解析を行い,生成的ノーマルフォームの1次分岐解としてロールは安定であるが,正六角形,正三角形,パッチワークキルトが不安定であることを明らかにした.開折パラメターの値によらず,分岐点からある程度離れた超臨界領域において安定な正六角形がロールと共存する.これは実験結果を支持する.
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