水素様原子におけるシュタルク効果は、量子力学の草創期以来良く理解されているといえよう。対して、電子相関に強く支配される原子系に対するDC電場の効果の研究は、最近はじめられたばかりである。特に外場の影響と電子相関の強さが拮抗する領域での光励起と崩壊のダイナミックスは興味深い。 装置の立ち上げ:反応領域に100kV/cmに及ぶ強いDC電場をかけることが出来る放射光原子光イオン化装置の設計、組み立て、立ち上げの大部分は、前年度に行われた。そして蛍光、準安定原子、光イオンの3チャンネルの検出系を付け加え、それぞれのチャンネルにおける光エネルギー走引スペクトルを測定が可能になった。 光イオン測定:今年度の成果として、前年に引き続いてヘリウムの2電子光励起共鳴の、光イオン測定を続行した。高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設(Photon Factory)において予備的な実験を行った後に、Lawrence Livermore National Laboratory(LLNL)の第3世代放射光実験施設Advanced Light Source(ALS)に装置を持って行って高分解能測定を行った。予想された共鳴のエネルギー位置のずれおよび形状変化に加えて、数多くの通常は禁制になってる遷移が出現した。これらには最も新しい理論計算と比較してかなりのずれがみられ、蛍光チャンネルおよび3重項の考慮、など、理論計算の改善を示唆するものであった。この成果は、最近Physical Review Letters及びJ.Phys.B等に発表した。 蛍光測定に関しては、新たに蛍光寿命弁別分光法(Lifetime Resolved Fluorescence Spectroscopy)を開発し、2電子光励起状態の崩壊過程および寿命に対する電場の影響にっいて興味深い知見がえられた。 上記の仕事の主要部分は、本研究所ポストドク(非常勤研究員)James Harries氏と協力して行われた。
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