研究概要 |
流体の運動では,渦度が管状に集中する一般的傾向があり,さまざまな種類の乱流に,「管状旋回渦」と呼ばれる組織構造が普遍的に存在し,乱流運動の生成や維持,そして浮遊物質の混合や拡散に中心的な役割を演していることは,従来から予測されているところである。しかし,そのメカニズムについてはまだよくわかっていない。本研究は「乱流混合現象」の理解とその応用を目的とし,流体中に浮遊する物質が乱流運動によって,どのように変形され,周囲の流体と交じり合っていくのかを定量的に評価するとともに,管状旋回渦を操作することによって,浮遊物質の混合を促進したり抑制したりすることを目指している。 本年度は,もっとも基本的な浮遊物質である流体線と流体面を取り上げ,混合現象の基礎的なメカニズムを探ることにした。一様定常乱流中で,これらがどのように変形され,どのような割合で伸びていくかを,直接数値シミュレーション可視解析により求めた。その結果,乱流中の流体線の長さと流体面の面積は指数関数的に増加すること,流体線の長さの伸張率は0.17(1/τ)(ここにτはコルモゴロフ時間)で,流体面の面積の伸張率は0.30(1/τ)であることがわかった。これらの値は流体線や流体面の運動を正直に数値的に解いて得られたもので,従来から伝統的に用いられてきた「要素線」や「要素面」の伸張率の相加平均による値[それぞれ,0.13(1/τ)と0.16(1/τ)]がかなり不正確であったことを示している。流体線や流体面のこれらの正確な伸張率は,乱流モテルの係数としても重要な意味をもつ。つぎに,流体線と管状旋回渦の同時可視解析により,渦は反平行に揃う傾向にあること,そして,流体線は反平行渦対の淀み点(渦対に相対的な座標系で),で強く伸張されていることを見出した。
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