研究概要 |
本研究では,爆発的噴火のダイナミックスと火砕堆積物中の観測事実をつなげる目的で,火山噴煙のダイナミックスと火道中のマグマ上昇についてモデリングを行った.具体的には 1.火山噴煙のダイナミックスの理論モデルの構築, 2.火道流のダイナミックスと気泡の核形成・成長の連成モデルの構築, 3.実際の噴火事例に対する噴火推移の詳細な再現,の3課題の研究を行った. 1については,乱流混合を正確に再現する数値モデルを構築した.具体的には,噴煙のような強制プリュームの乱流混合においては,流れの3次元的揺らぎが本質的な役割を果たしていることを示し,その乱流混合は,3次元の座標系を用い計算スキームの空間精度を3次精度まで上げることによって数値的に再現できることを示した.このモデルは,世界で始めて大気と噴煙の乱流混合を定量的に再現しつつ噴煙の非定常かつ3次元的挙動を計算することを可能にした拡張性の高い火山噴煙数値モデルである. 2については,セルモデル(気泡流を「気泡の周りに球対称に非圧縮の粘性流体または粘弾性体の殻がついたセルの集合体」として近似するモデル)を導入し,気泡サイズスケールの微視的過程と巨視的な火道流を連立させたモデルを構築した.このモデルによって,気泡の核形成のタイミング,火砕物中の気泡径分布,マグマの破砕様式が,マグマの粘性や噴出率などの噴火パラメータに強く依存することが明らかになった. 3については,浅間1783年の噴火について,詳細な地質調査,噴出物の観察,古文書の解析に基づいて噴火推移の再現を行った.その結果,この噴火は,マグマの破砕の程度が小さく,比較的粗粒な火砕物が卓越するという特徴をもち,その特徴が,噴煙と火砕丘・溶岩流の同時形成という複雑な噴火様式をもたらす原因となったことが分かった.
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