研究概要 |
当初計画では,本年度に三宅島の火山体を形成している代表的な数種の玄武岩を採取し試料を作成,その試料に対して現状で実験が可能な100℃までについて流動電位係数決定実験を行い,係数のpH,塩濃度,イオン価数,温度依存性を決定する予定であった.しかし,追加交付であったこと,既存の実験装置の問題点(圧力容器,センサーの材質の問題から火山流体による流動電位現象を明らかにする上で重要となる低いpHでの実験ができない)が判明したことから,測定装置を組みなおす必要が生じた.そこで,測定装置の改良を図り,ガラスセルを用い,圧力センサーとして腐食に強いインコネルメタルを使用することにした.予察的な実験から,当計画が目指している条件下での測定が可能であることが確かめられた, 岩石試料の採取は,三宅島,神津島で行った,この際,神津島においては,自然電位の地形効果を明らかにするための自然電位マッピングも実施した.地形効果は,地下水が斜面を流れ下ることによる流動電位現象によって起こると考えられており,山側で負,海側で正となる電位分布が生じる.三宅島の地形効果が約1mV/m(高度1m上昇につき1mV電位が下降する)であったのに対し,神津島では約10mV/mと約10倍であった.三宅島は,塩基的なゲンブ岩であるのに対し,神津島は酸性的な流紋岩から成り立っている.このため,上記の地形効果の差が,両島で採取してきた岩石の流動電位係数の差によって説明できるのかどうかを実験的に明らかにすることも目標の一つに加えることにした.三宅島では,過去,繰り返し熔岩を噴出しており,岩石採取の折には,その各年代の岩石を採取するように努めた. 本年度は以上のように,実験装置の改良と,岩石試料の採取を行い,来年度の実験に備えた.
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