研究概要 |
最近の研究により,アスペリティは場所に固有であること,アスペリティと非地震性すべり領域とが棲み分けているらしいこと,東海地域のプレート境界では非地震性すべりが間欠的に発生していたことなどがわかってきた.本研究の目的は,室内実験と数値実験によりアスペリティと非地震性すべり領域との相互作用について明らかにすることである.相互作用を考えるための最小のユニットである,ふたつの要素からなるシステムについて検討した. 大型剪断試験機を用い,長さ1mの花崗岩の模擬断層面に摩擦特性の異なる領域を分布させ,すべり実験を行った.模擬断層面のうち,半分の領域に薄いテフロンシートを挟み,速度・状態依存摩擦構成則のパラメータa-bが正となるようにし,残り半分の領域は花崗岩どうしを直接接触させ負になるようにした.a-b<0の領域はアスペリティ的に振舞い,固着すべりを起こした.a-b>0の領域では,アスペリティでの動的すべりにより応力が急激に上がり,それを緩和しながら顕著な余効すべりが起こった.この非地震性すべり領域でも,アスペリティでの動的すべりに連動し地震時すべりを起こすが,地震時すべり量はアスペリティから離れるほど小さくなっており,実際の地震と同様の挙動を示す. 次に,ふたつのブロックをバネで連結し,ドライバーをゆっくり動かしていくモデルを使った数値実験を行った.a-b<0のブロックとa-b>0のブロックを仮定し,適当な摩擦パラメータを仮定すると,室内実験でみられたアスペリティと非地震性すべり領域の相互作用による余効すべりを定量的に再現できた.また,パラメータが安定・不安定境界に近いとき,間欠的な非地震性すべりを起こすことを示した. 以上の結果等から,摩擦構成則パラメータの値によって,様々なすべりモードの棲み分けが決まると考えられる.
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