研究概要 |
本研究の目的は、広帯域波形データの詳細な解析により、地球内部不連続面の凸凹構造を高精度かつ高解像度に推定することである。本年度は、詳細な凸凹構造推定に必要な理論計算手法の定式化およびソフトウェアの開発を行った(水谷&ゲラー2004年地震学会等)。以下に具体的な成果を述べる。 (1)一定間隔のグリッドに一致しないような任意形状の固液境界のある場合に高精度でかつ効率良く波形計算できる手法を導出した。グリッドに一致しない固液境界が存在する媒質の場合、グリッドに一致しない自由表面の取扱いと同様に境界に一致するように仮想的なノードをおき、差分演算子を求めることができる。しかし、非常に格子間隔Δxの小さな要素が生じる場合、クーラン条件が厳しくなり、小さなtime stepで計算する必要がある。しかし、仮想的なノードの値をexplicitに用いず、Taylor展開を用いてその値を評価することで、固液境界を含むgrid cellに対して、最適演算子の満たすべき基準(Geller and Takeuchi,1995,GJI,eq2.20)を満たすような演算子を導出することが出来る。この演算子はPredictor-Correctorスキームを用いることでΔxの二乗の精度で安定して計算することができる(水谷&ゲラー2004年地震学会)。 (2)浅い地震に対する理論波形計算手法の開発を行った。従来の研究では、深発地震に比べて浅発地震に対する理論波形の計算は困難であった。本研究は、その原因がevanescent regime(波数が虚数である領域)の不適切な取り扱いによる誤差にあることを突き止め、その領域に誤差理論(Geller&Takeuchi,1995)を適用することによって解決した。また、震源の深さによって必要となるangular orderが異なることを示した。そして、evanescent regimeの急激に減衰する特性を生かし、効率的な計算手法を開発した(河合ら、2004年地震学会)。 (3)これまで我々は最適空間2次精度の最適差分スキームを導いたことがある。それに付け加えて同様な理論を使って、時間2次空間4次精度の差分スキーム及び時間精度2次の空間演算子はspectral element methodのそれぞれの最適スキームを導いた。その結論は、(1)最適スキームは同種類の最適でないスキームと比較すれば、あらゆるケースでは前者の方のcost-performance ratioがよい。(2)それぞれの最適スキームのうち、時間・空間2次の方が現実的問題においてよい。(平林ら、2004年地震学会)
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