研究概要 |
本研究は,高密度地震観測網から得られる短周期表面波データを利用してその観測網の地域における3次元地震波速度構造を得ることを目的としている. 本年度は不均質媒質中での表面波波形計算方法を開発することを中心に研究を進めた.本研究ではTanimoto(1990)の提唱した方法に基づき,ポテンシャル関数と局所的な表面波固有関数(深さ方向の固有関数)の積で表面波が表現できることを仮定する.これは,地球内部構造の不均質性が滑らかであるという仮定に相当する.このポテンシャル関数は不均質な表面波位相速度分布に対する2次元スカラー波方程式の解として得られる.本研究では周波数領域の方程式を用いるので実際にはヘルムホルツ方程式になる.そして,我々は波線理論などの近似によらずにこのヘルムホルツ方程式の解を数値的に直接求める方法を採用した.これは数値誤差の範囲で厳密な解を求めることに相当するので,波線経路が多重になること,有限周波数の効果,同一分散ブランチ内での表面波散乱などの効果をすべて取り入れることが可能となる.さらに波動場に対する相反関係とボルン散乱近似を用いて,構造パラメータの摂動に対する偏微分係数を計算することも可能になっている.この偏微分係数を使えば,不均質初期モデルを用いて地球内部構造のインバージヨン(トモグラフィー)を実行することができる. 本年度は,上の方針に基づいた手法の開発を行なった.そして,日本列島周辺を単純化したモデルを作成して,分散性が波形に大きく現れることや,偏微分係数が直線経路からずれた部分に感度を持つことなどの不均質構造による影響を見出して,検証しているところである.これらの研究は地震学会秋季大会,American Geophysical Union, Fall Meetingで発表した.
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