研究概要 |
本研究は,高密度地震観測網から得られる短周期表面波データを利用してその観測網の地域における3次元地震波速度構造を得ることを目的としている.本年度は、前年度に始めた不均質媒質中での表面波波形計算方法の開発を継続するとともに、現実的な不均質速度構造を設定して、実際の観測表面波波形と本研究による理論表面波波形を比較することなどを行った。まず本研究の対称領域の一つである日本列島周辺について、速度構造モデルを設定した。本研究では各地点ごとに表面波固有関数を計算する。そのため、日本列島周辺をいくつかの(IUGG発表の結果では8km×8km)の格子に分割し、そこでの海の深さをもとにして各地点での局所的な(平坦)構造を仮定した。このモデルをもとに、表面波ポテンシャル関数の計算と波形合成を行った。周期10秒付近の表面波ではポテンシャル関数や構造解析用のカーネルに大きな歪みを生じることが確認できた。周期30秒程度の場合は大きな歪みは生じないが、位相速度には2%以上の地域的な変化があるため観測上は不均質性がやはり重要である。また、2002年房総沖地震(Mw5.5)による表面波には、標準的なモデルで予想されるよりもかなり遅い波群が見られる。理論波形を計算するとレイリー波波群の遅い走時をある程度は再現することがわかった。しかし、波形全体の一致は依然として良くはなく、またラブ波については観測波形の特徴を再現するに至っていない。そのため、日本列島周辺での初期モデル速度構造の改良を進めているところであり、構造解析は今後の課題とすることした。なお、これらの研究の一部はXXIII General Assembly of the International Union of Geodesy and Geophysics (Sapporo, Japan,2003)で発表した.
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