南極大陸東部下を通るP、PP、S、SS波の波形の特徴の検出 本年度は、ニュージランド南方・海嶺-トランスフォーム断層の浅発地震のP波からPP波、S波からSS波の地震波形記録を収集し、その特長を明らかにした。この地域の地震は、震央距離30-60度程度で南極大陸の広帯域地震計に記録される。これらのデータはここ数年で蓄積できたものである。 南極点では、これらの地震を震央距離26-40度で観測できる。観測されるP波は、ほぼIASP91の理論走時に到達し、単純な波形を示す。その一方で、PP波の理論走時の約40秒前に大振幅をもった地震波が観測できる。この波は、震央距離28から34度ぐらいまでみることができる。みかけ速度は、P波よりも遅い。SH波にも、同じようにSS波の理論到達時刻に先行して、大きな振幅の地震波が、SH波よりも遅いみかけ速度で現れる 昭和基地では、PP波の波形に次のような特徴が確認できた。(1)震央距離41-42度付近で観測されるPP波は、形が単純で継続時間の短いパルスであり、振幅はP波の数倍と大きい。(2)震央距離43-44度あたりから、継続時間が長くなり振動回数が増え、更に距離が46度程度より遠くなると、波形が複雑で、振幅もP波と同程度になる。 さまざまな速度モデルから計算される理論波形との比較から、これらの観測された地震波の特徴は、南極大陸東部の地殻および上部マントル構造に依存していることが明らかになった。特に、SPAで観測されるPP波あるいはSS波の先行波は、高速度最上部マントルによって生じている可能性が高い。また、P波とS波の両方の波形で調査できる見通しが立ったことは、次年度、この構造の生成要因の解明に意味がある。 これらの研究成果は、2002年12月アメリカ地球物理学連合秋季大会で成果報告した。
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