昨年度、西南日本におけるフィリピン海プレートの沈み込みに伴う熱と流れのシミュレーションを行う際に用いた2次元差分プログラムを基に、新たに3次元差分プログラムの開発を進めた。パラメターの無次元化、プログラムの並列化・高速化、計算結果の描画プログラムの開発を行い、3次元の熱対流計算を実現するところまで到達した。大陸側プレートの地殻領域を表す伝熱層のモデル化や簡単な形状の3次元スラブの動的沈み込みのモデル化にも成功し、西南日本をターゲットとした沈み込むフィリピン海プレートと陸側プレートのプレート境界での3次元温度分布の計算、温度分布と海溝型巨大地震の発生領域との関連性の比較検討を行う準備を整えた。 また、近年、西南日本で発見された低周波微動と非地震性すべりの同期性について両者の関連性を調べた。半無限均質完全弾性体を仮定したディスロケーションモデルを用いて、非地震性すべりに対する断層パラメターを与え、断層すべりに伴うΔCFFを計算し、低周波微動の発生領域での応力変化を見積もった。その結果、解析を行ったすべての場合において、低周波微動は非地震性すべりによるΔCFFが負になる領域で発生しており、非地震性すべりが低周波微動を誘発するとは考えにくく、低周波微動に伴う水の流れが非地震性すべりを引き起こしているか、テクトニックな応力の擾乱により、両者が同時に発生している可能性を示した。また、1997年4月に四国西部で発生した群発地震と1997年〜1998年に豊後水道で発生した非地震性すべりについても同様の解析を進め、後者が前者を誘発している可能性は低いことを示した。
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