研究概要 |
周辺を海に囲まれている日本では海域での地震観測が不可欠であり,海底地震計による観測とともに離島での観測が重要である.しかし,離島,特に無人島での長期にわたる地震観測はこれまであまり行われなかった.一方,最近の技術の進歩により原理的には無人島でのリアルタイムでの地震観測は可能となってきているが,通信経費などの問題からすぐに実現することは困難である.本研究は,リアルタイム観測が実現するまでの期間に実施可能な準リアルタイム観測を既存の観測装置を用いて試験するとともに,将来の無人島を含む離島でのリアルタイム地震観測を行う際の問題点を洗い出すことである.平成14年度は鹿児島県山川町と喜界島での短期の予備観測を実施することにより観測システムのプロトタイプが完成し,平成15年1月から界島で本格的なランニングテストを開始した.テスト開始から約1ヶ月が経過した現在のところ,システムは順調に動作している.現在テストに使用しているシステムの概要は以下のとおりである.メモリに蓄積されているサンプリング周波数100Hz・分解能24bitでA/D変換された3チャンネルの波形データは,主局の切り出し命令によって必要波形データだけを抽出し衛星携帯電話で主局に伝送している.メモリには約10日分のデータが保存されている.時刻はGPS信号を1時間に1回受信・校正することにより管理されている.電源部は太陽電池とバッテリーのみで運用している.主局からは1日1回呼び出しをかけており,平均して1日あたり10個弱の地震波形データを主局に伝送している.喜界島でのランニングテストを3ヶ月程度継続した後,無人島であるトカラ列島横当島での試験観測を実施する予定である.
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