研究課題
基盤研究(C)
地球のマントルを構成しているおもな物質の熱拡散率と熱伝導率を圧力8GPaまで温度1100Kまでの範囲で測定した。測定方法には一次元方向の熱流を使うパルス加熱法を採用した。熱拡散率の圧力による増加率は1GPaにっき、カンラン石で3-4%、ザクロ石で〜3%、また熱伝導率についてはそれぞれ〜4%と〜3%であった。また、輝石の類似物質のヒスイについて測定し、その熱伝導にはカンラン石と似たような傾向のあることがわかった。これらはいままでの高圧での熱伝導率または熱拡散率の測定結果や理論による推定値とも合い、おもなマントル物質において熱伝導に対する圧力効果はほぼこの値に落ちついたとみられる。カンラン石の熱伝導の異方性は、その安定領域の上部マントル内にわたって保たれていると考えられる。また、ザクロ石の熱伝導度の変化は圧力の増加にしたがい頭打ちの傾向が見られ、やや特異な性質を示す。熱拡散率と熱伝導率の同時測定なので、比熱の値をだせる。ここで求めたカンラン石とザクロ石の比熱の値は既存の実測値とよい一致をみた。このように本研究を進める中で高圧では測定が行われたことのないマントル物質の比熱を求めるという鉱物物理学の新しい展開がでてきた。今後は本研究を継続させ、圧力の範囲を上部マントルの底の深さ400kmに相当する15GPaを超えることを目標に実験を進めるつもりである。また、いまのところ測定精度は熱拡散率で2%、熱伝導率で3%と見積られるが、試行ごとの系統誤差がそれ以上ある。試料部の工作精度が足らないことや、加圧時の変形が測定の不確かさを大きくする原因になっていると考えられる。これらの点を改良して測定精度を格段に上げ、地球内部の状態方程式の議論に使えるような高圧下の比熱のデータがとれるようになることを望んでいる。
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Physics of the Earth and Planetary Interiors 143, 144
ページ: 311-320
Physics of the Earth and Planetary Interiors 143-144