西部赤道太平洋のカロリン海盆および南西太平洋のマニヒキ海台で採取された堆積物コア計6本の、磁化率、自然残留磁化(NRM)、非履歴性残留磁化(ARM)、等温残留磁化(IRM)等の測定を行った。Uチャネルを用いて採取した試料については、時間解像度を向上させるため、デコンボリューション処理を行った。これらのコアは過去約120〜300万年の年代をカバーしている。各コアについて、NRM強度をARMで規格化して、相対的古地磁気強度変動曲線を求めた。カロリン海盆の3本のコアについては、磁化率及びARMの変動を、南シナ海のODP Site 1143において報告されている、ミランコビッチ周期にチューニングされた酸素同位体比曲線と対比することにより、2万年程度の精度で年代を決定した。マニヒキ海台において採取された3本のコアについては、酸素同位体比の測定データ(PC4)、堆積物の色とARMの変化(PC2)、磁化率とARMの変化(PC5)をそれぞれSite 1143の酸素同位体比曲線と対比することにより年代を決定した。これらの年代を基準にスタッキングして得られた相対古地磁気強度変動パターンは、それぞれの海域内だけでなく、約7000km離れている2つの海域間においても、年代決定の誤差の範囲でよい一致を示した。 80〜300万年前の古地磁気強度において、ブルン期の標準曲線Sint-800と同様に、10〜20万年程度の間隔で繰り返し極小が存在する。極小の多くは、地磁気逆転境界及び今までに報告されたエクスカーションの年代と一致する。このことは、ブルン期に限らず、古地磁気変動においては強度の急激な減少とそれに伴うエクスカーションが頻繁に起きていることを示す。ガウス-松山境界をはじめ、地磁気逆転境界において、いわゆるasymmetric sawtooth patternは見られなかった。
|