なんらかの理由で大気二酸化炭素濃度がある臨界濃度以下に下がると、不安定が発生して全球凍結に陥る。これまでの研究によると、二酸化炭素濃度の低下には炭素循環システムにおいて、風化率、火山活動度、生物生産、有機炭素の埋没率のいづれかの変化が要因となる。このうち、風化率と生物生産は、大気の水循環や海洋循環に強く影響を受けており、これは大陸配置の影響を受ける。一方、全球凍結の臨界条件事体が変化する可能性が考えられる。大気海洋の南北熱輸送や雪氷のアルベドフィードバックの性質の変化などが影響し、やはり、大陸配置や造山帯位置の変更が大いに関係する。したがって、大陸配置の変更は二酸化炭素濃度の低下にも全球凍結の臨界条件にも影響を与えることが考えられる。 本研究では、大陸配置依存性について、まず、全球凍結の臨界条件事体が変化する可能性について検討した。海洋熱輸送の変化の寄与を考えずに大気熱輸送の寄与のみを考える限りにおいては、大陸配置はほとんど臨界条件に影響を与えないことがわかった。今後この結論は海洋循環や海氷力学の扱いによって変更される可能性があることが、予備的に現在開発中の大気海洋海氷結合モデルの示す南北半球の違いから示唆された。またさらに3次元氷床モデルに大気モデルの結果を入力する実験を行った。この実験より氷床の力学が臨界条件を変更することが示唆される。海洋および海氷の効果と氷床力学の効果については今後の課題として検討していく必要がある。 大陸配置の変更が二酸化炭素濃度の低下に与える影響についても検討を開始した。地球化学モデルの入力として大気大循環モデルの降水量、蒸発量、気温等を用いて検討を行っている。残念ながらこれを今年度でまとめることはできなかったが、これまで用いられなかった方法の開発を進めることができた。以上の成果は米国地球物理学会(AGU)のFall meetingで発表した。投稿論文としてまとめていく予定である。
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