研究概要 |
夏季高温日午後に関東平野に発生する降水の分布パターンを分類し,それらと地上風分布との関係を解析した。その結果,午後に発生する降水の分布と地上風分布との間に統計的な対応関係が認められ,東京都心を中心とする降水は関東東岸から侵入する東風が東京付近で収束する状況下で発生することが見出された。 降水の発生頻度について,過去40年間の変化傾向を調べた。その結果,国内では近年夜間の降水が増加する傾向にあることが見出された。 東京に発生した豪雨事例(1999年7月の「練馬豪雨」)について,これをもたらした降水システムの発生から衰弱までの気流構造をドップラーレーダーデータ等を利用して解析するとともに,数値シミュレーションを行った。その結果,練馬豪雨の降水域は,南からの湿った下層風の収束に伴って発生したこと,また北側の既存の降水域からの冷気流が降水を強めることが分かった。また,数値予報モデルにドップラーレーダーデータ等を同化することによって,練馬周辺の降水をある程度再現することができた。 GPSによる視線水蒸気情報を用いて豪雨域周辺の水蒸気分布を解析した。その結果,豪雨に先行して水蒸気の蓄積と水平方向の水蒸気分布の非一様性増大が認められた。また,可降水量を地上水蒸気量で割った値が豪雨に先行して増加していた。これらを利用することにより,時・空間的に細かなスケールで豪雨を検知できる可能性のあることが示された。
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