研究概要 |
夏季高温日午後に関東平野に発生する降水の分布パタンを分類し,それらと地上風分布との関係を解析した。その結果,午後に発生する降水の分布と地上風分布との間に統計的な対応関係が認められ,東京都心を中心とする降水は関東東岸から侵入する東風と南岸から侵入する南風が東京付近で収束する状況下で発生することが見出された。 降水の発生頻度について,過去42年間の変化傾向を調べた。その結果,国内では近年夜間の降水が増加する傾向にあることが見出された。 東京に発生した豪雨事例(1999年7月21日の「練馬豪雨」)について,これをもたらした降水システムの発生から衰弱までの気流構造についてドップラーレーダーデータ等を利用して解析した。その結果,練馬豪雨の降水域は,南からの湿った下層風の収束に伴って発生したこと,また北側の既存の降水域からの冷気流が降水を強めることが分かった。また,三次元数値実験によって豪雨をもたらした降水系の再現を試みた。その結果,モデルにドップラーレーダーデータ等を同化することによって,練馬周辺の降水をある程度再現することができた。 GPS解析によって得られるGPS電波の経路に沿った受信機と衛星間の水蒸気量(視線水蒸気量)を用いて,豪雨域周辺の水蒸気分布についていくつかの事例解析を行った。視線水蒸気量を等方成分(可降水量),一次の勾配成分,及び高次の非一様成分に分けて解析を行った結果,豪雨に先行して,大気内における水蒸気の蓄積と,これによる視線水蒸気量の非一様成分の増大が認められた。また,可降水量を地上水蒸気量で割った値が豪雨に先行して増加していた。これらを利用することにより,時・空間的に細かなスケールで豪雨を検知できる可能性のあることが示された。
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