研究概要 |
最近のIAPSO塩分標準海水について、条件を完全に同一に設定し時期も同期した塩分標準海水相互比較実験を日本側および米国ウッズホール海洋研究所で行った。平成14年度に行った実験と今回の4組の実験結果(2機関各2回)を、過去に公表されているIAPSO塩分標準海水のOFFSET Table(Aoyama et al.,2003)に接続し、そのTableをバッチP143まで延長した。また過去のIAPSO塩分標準海水のOFFSET Tableにおいて、試料が入手できず直接の比較実験が行えなかったためOFFSETが求められていなかった複数のバッチについて、直接の標準海水比較実験ではないが、間接的に比較実験をしたとみなせる文献を利用してOFFSETを推定した。これにより、ほとんどすべてのバッチについてOFFSETを確定することができ、1990年以降の世界的なプロジェクトで行われてきた海洋における塩分測定によりえられた値の補正を可能にした。 現実の海洋データへIAPSO塩分標準海水のOFFSET適用について、塩分測定時の詳細なデータが得やすい日本周辺の高精度の塩分データを収集し、塩分の長期変動について解析した。その結果、西部北太平洋亜熱帯域中層や日本海深層で見出された10年で塩分0.005程度の塩分上昇の約半分程度はIAPSO塩分標準海水のOFFSETに起因するものであり、実際の塩分上昇量は報告されている値の約半分であることを見出した。このことは、塩分0.005程度の塩分変動を研究するには、現実の海洋塩分データに対してIAPSO塩分標準海水のOFFSETを適用する必要があることを示している。
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