昨年度に引き続き、最新のIAPSO標準海水(SSW)のバッチP145までについて日本とアメリカで同時期に同じ手順で同期させてSSW比較実験を行った。この結果、独立に2箇所で行った比較実験で得られたIAPSO塩分標準海水のオフセット値が塩分0.0002〜0.0005の差に収まり比較的良く一致していることが確認され、得られているオフセット値が妥当であることが検証された。さらに日本側では単独でもSSW比較実験を行った。これら複数回のSSW比較実験の結果をもとに作成されたP103からP145までのSSWのオフセット値は塩分-0.002〜0.001の範囲にあった。 また、現実の海洋データにおいて、WOCEで得られたP1およびP17航海での塩分データと1999-2001年に行った再観測の塩分データの間に見られた不自然な塩分変動あるいは日本海での塩分変動は、提示したオフセット値を用いて補正することにより、そのかなりの部分がSSWのオフセットに由来するものであることが分かった。これらのことから、塩分データをSSWオフセット値で補正することは、海洋学および気候変動の研究にとって非常に有効であると思われる。 さらに、SSWのオフセットの成因を突き止めるために行った塩化カリウム定義溶液を用いた実験の結果をまとめた結果、塩化カリウムのロットあるいは製造メーカーによる電気伝導度の差が明らかになり、これがSSWオフセットの成因である可能性が示されるとの論文を発表した。
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