1.磁気圏尾部の高ベータプラズマ中の磁気流体不安定であるバルーニング不安定の研究において、磁力線に沿って格子点をとり、ルンゲクッタジル法による数値積分でイオンのバウンス周波数を求めた。この結果、地球から15Re付近の尾部では平均的なイオンのピッチ角に対して、イオンのバウンスと磁気ドリフト周波数は流体で求めたバルーニング不安定の成長率より小さくなり、運動論的な効果は15Re付近では重要でないことがわかった。従って流体的に求めた不安定のための臨界ベータの値や成長のアルフベン波の時間スケールが妥当であることがわかった。しかし15Reより遠くへいけば行くほどイオンのバウンス周波数や磁気ドリフト周波数が流体で求めたバルーニング不安定の成長率より大きくなり、15Reより遠方ではバルーニング不安定に対して運動論的な効果も重要になることがわかった。 2.磁気圏境界でのK-H不安定の研究においては、電場ドリフトのシアーではなく高ベータプラズマ中のイオンの反磁性ドリフトのシアーによって生ずるK-H不安定が太陽風直下点の真昼間磁気圏境界で起こることがわかった。今までK-H不安定は磁気圏の脇腹付近で起こることが予想されてきたが、今回の解析の結果、電場ドリフトがない真昼間磁気圏境界においてもイオンの圧力勾配に伴う反磁性ドリフト速度のシアーによって新しいK-H不安定が起こることが示された。この不安定においてはプラズマと磁場の凍結が破れており、この結果は磁気圏へのプラズマの輸送を考える上で重要である。
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