サブストームオンセット直前に予想される引き伸ばされたテイル磁場のモデルに対してイオンのバウンス周波数のピッチ角平均を数値的に求めた結果、|X|=15Reではバルーニング不安定の成長率の方がイオンのバウンス周波数のピッチ角平均より大きくなり、この関係はより地球に近い側ではより成り立ちやすくなることが明らかになった。従って、サブストームのオンセットが起こると考えられる6Reから12Reの領域では平均的に言ってアルフベン波に共鳴しうるイオンはなく、バルーニング不安定の生起の流体的記述が妥当であることが明らかになった。また、|X|=15Reでイオンのふるまいが断熱的か非断熱的かをイオンのジャイロ周波数とイオンのバウンス周波数の比を、おのおののピッチ角に対して計算することにより調べた。イオンのバウンス周波数がジャイロ周波数より大きくなるとイオンの磁気モーメントの保存の、そもそもの仮定が成り立たないと考えられ、この比は非断熱性を表す一つのパラメーターと考えられる。この比は必ずしも磁力線の曲率半径とイオンのラーモア半径の比で粒子の非断熱性を表すカッパパラメーターに等しくなく、それよりも大きく、この周波数の比の非断熱パラメーターで見る限り|X|=15Reでもイオンのバウンス周波数はジャイロ周波数より小さくイオンの運動は断熱的と考えられることが明らかになった。以上の結果から、|X|=15Reより地球に近いサブストームのオンセット領域と言われている6Reから12Reの近尾部では運動論的にも断熱的にもバルーニング不安定性の流体的記述が妥当であることが示され、流体的解析によって求めたバルーニング不安定のオンセットの条件等を近尾部に適用する上での一つの大きな障害が取り除かれた。
|