磁気圏尾部でのバルーニング不安定等の磁気流体(MHD)不安定を考える上で粒子の磁気モーメントの保存が成り立つか否かを知ることは磁気流体方程式中に現れるプラズマの状態方程式としてどのような式を使えばよいかについて一つの知見を与える。そこで磁気圏尾部での粒子の非断熱性を定量的に評価するために磁気圏尾部の自己無撞着な定常解から求めた磁力線上の捕捉粒子について赤道面上でのジャイロ周波数と粒子のバウンス周波数との比を求めた。粒子のバウンス周波数は数KeVのエネルギーで異なるピッチ角を持つ粒子に対して計算した。この結果、この周波数の比はピッチ角の小さいところでは粒子の非断熱性を表わすとされている磁力線の曲率半径と粒子のラーモア半径の比の平方根で与えられるカッパパラメーターの2乗よりかなり大きく、ピッチ角が大きくなってくるとバウンス運動の振幅が小さくなるためにカッパの2乗に近づいてくることが明らかになった。またこの比は地球からの距離|X|が大きくなってくると小さくなり、カッパと同様に粒子の非断熱性を表わす振る舞いをすることが明らかになった。今回用いた磁場のモデルではこの周波数比の非断熱パラメーターで見る限り|X|=15Reでもイオンのバウンス周波数はジャイロ周波数より小さくイオンの運動は断熱的と考えられることが明らかになった。しかしある程度、地球から離れた|X|の大きいところではイオンの振る舞いは非断熱的となること、更に、もっと大きな|X|では電子の振る舞いも非断熱的となることが示された。以上の結果はこの周波数の比のパラメーターがカッパパラメーターと同様にMHDの状態方程式を決める上での重要なパラメーターとなること、しかしピッチ角の小さな粒子に対してはカッパパラメーターの2乗と大きく異なることを示す。
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