研究概要 |
磁気圏MHD波動の理論的な発生・伝播モデルの一般化を行った。Itonaga et al.[2000]が与えた沿磁力線電流(FAC)の発生を記述する波動方程式は,無摂動状態が静止状態であることを仮定している。しかし,近年のグローバルMHDシミュレーション技術の進展に伴い,外部擾乱(太陽風の変動)に対する磁気圏のより現実的な過渡応答を調べることができるようになってきた。このようなシミュレーションでは,無摂動状態であっても,磁気圏は静止状態ではなく,対流が存在する。そこで,そのような状況にも対応できるよう,FACの発生を記述する波動方程式を一般化した。詳細は,現在,論文としてまとめているが,一般化された波動方程式をグローバルMHDシミュレーションの結果に適用することにより,Kataoka et al.[2004]はTCVの源が磁気圏内のプラズマの加速による慣性電流であることを明らかにした。 磁気圏MHD波動伝播の3次元グローバルシミュレーションにプラズマポーズの経度依存性を取り入れた[Fujita and Itonaga,2003】。中低緯度Pi2脈動の観測から,Kosaka et al.,[2002]はPi2脈動のパワーが最大になる周波数に地方時依存性があることを示した。彼らはこれをプラズマポーズに励起される表面波に帰したが,我々のシミュレーションの結果はプラズマポーズの非対称性に起因するプラズマ圏空洞共鳴振動振幅の地方時依存性が原因であることを示している。今後,3次元グローバルシミュレーションの精度をさらに高め,表面波とプラズマ圏空洞共鳴振動のどちらが主因であるのかを解明する必要があるが,本年度中の達成には至らなかった。 並行して,グローバルMHDシミュレーションによるPi2脈動の発生・伝播機構の解明を目指しているが,その前段階として,SCの再現を試み,PI電流とMI電流の起源を明らかにすることができた[Fujita et al.,2003a,2003b]。
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